寂しがりやの猫
店を出ても田村は 私の手をそのまま握ってくれていた。

私は ちょっと緊張して、でも嬉しくて仕方なかった。

そのまま夜の街をブラブラと散歩した。


「けど、急に辞めるなんて言って課長怒ってたんじゃない?」

私は 不意に思い付いて聞いた。


「はい… 怒ってましたけど… 最後には 判ってくれました。それより…」

「ん?」


「ちょっと結城さんが」


「あ…」

そうだった… 結城は 田村が好きだったんだ。


「千里ちゃん、好きなんだよね… 田村のこと」


「え… 知ってたんですか」


田村は ちょっと驚いて私を見る。

「うん。相談受けたことあって」


「そうだったんだ…」

田村はギュッと手を握り直した。


「すいません、なんか」


「え、何が」


「俺がモテるばっかりに」

「は?」


田村を見ると クックッ…と笑っている。

「あのね~ アンタね、調子にの…

ギュッと抱きしめられて 息が止まりそうになる。


「もう 絶対に 離しませんから…」


「…ばか…」


また 恥ずかしくて 真っ赤になってしまった…。
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