寂しがりやの猫
「はい、なんでしょうか」

慌てて課長の前に立った。


「お前、仲澤って覚えてるか?」


課長は お茶をすすりながら言う。


「え。あ、はい。もちろん 同期ですし」


―びっくりした…。今ちょうど考えてたとこだよ~

頭の中で言う。

てか 課長 気付いてなかったんだ。私達のこと。あの頃 仲澤くんのすぐ上の先輩だったのに。


「アイツ 帰ってくるらしいぞ。こっちに。 この秋の人事で正式に決まった。

13課の課長になるらしい」


「へぇ…そうなんですか」


― 懐かしいな。どんな風になってるんだろう…


「あいつ…バツイチらしいな」


課長は こそっと私の耳元で言った。

「え?そうなんだ…」

知らなかった。

結婚したことは 噂で聞いていたけれど、すっかり良いパパになっていると思っていたのに。


「大阪の女は 気が強いらしいからなぁ…、あ、東京の女も同じか」

課長は 私の顔を見て 苦笑いした。

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