Mary's Boy Child ―お父さんとお母さんはねこになった―
「だって今日はクリスマス・イブ。忘れ物を見つけることが、君とお父さん、お母さんのクリスマスプレゼントなんだ」
「くりすますぷれぜん…と? 忘れ物が?」
「そう、忘れ物がプレゼント」
意味深に小人は頷き、「ほらあそこ」と別の方角を指差す。
そこには、コートを来たスーツ姿のリーマンが駆けていた。
あれはおれだ。
若いおれは全力疾走で頼子に駆け寄り、「遅れました!」と相手に謝罪を述べている。
滲む汗も気にすることなく、平謝りするおれに笑っているのは頼子。
「相変わらずですね」とおどけて噴水の縁から腰を浮かした。
「真樹夫さんのことだから、きっとお仕事を一生懸命にしていたんでしょう?」
「あ、いえ…、実は頼子さんのプレゼントを選んでいたら、夢中になってしまっていて」
五時にはもう仕事を終えていたんですよ、はにかんで若いおれは持っていた小さな紙袋を相手に手渡す。
瞠目している頼子は、すぐにはにかみ返し、その紙袋を受け取っていた。
ああ、思い出した。
あれは頼子と付き合い始めて、初めての年のクリスマスの話だ。