Mary's Boy Child ―お父さんとお母さんはねこになった―
会社の同僚の友人に紹介してもらって、お付き合いすることになったおれと頼子。
仕事に対する情熱が意気投合したんだっけ。
お互いに仕事は手早く捌けても、恋愛に関してはしどろもどろの手探り状態で、いつも失態を犯していた。
あの時のおれもそう。
頼子に喜んでもらえるプレゼントを探そうと気合を入れていたのだけれど、見事に空回り。
約束の時間を1時間もオーバーしてしまったのだ。
それでも頼子は咎めもせず、笑って迎え入れてくれたっけ。
彼女の笑みだけで、走った甲斐があったと思えた若かりしおれに何だか恥ずかしさを抱いてしまう。
『ふふっ、そうそう。あの時の貴方、本当に血相変えて走って来たわよね。こっちがびっくりするくらい血の気を引かせていたわ』
『……、もう昔のことだろ』
苦虫を噛み潰したような顔を作れば、頼子に笑われてしまった。
向こうの若いおれ達は、早速プレゼント交換をしている。
彼女に紙袋を渡したおれの手には、頼子のプレゼントが。
中身を開けば、そこから万年筆が顔を出していた。
仕事大好き人間を見越した、気遣いあるプレゼントに若いおれは照れ笑い。
頼子の方も、中から出てきたネックレスに頬を紅潮させていた。