春、恋。夢桜。
一、月美丘
 



暗闇に、ぼうっと白い花が咲く。



まだ冷たい空気は頬を掠めて

体の表面からゆっくりと熱を奪う。


誰もいない公園を左に曲がって

寝静まった住宅街を抜ける。


左右に広がる並木道を、休まず見送る。



小高く静かな丘を一気に駆け上がると




そこは、月が一番美しく見える場所だった。
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