春、恋。夢桜。
 

「とりあえず、声に出してみるのです。あなたが無理だと思うことでも構いません。
何かあるのなら、正直に言ってほしいのですよ?」


わしの心の中を読んだみたいに、紅姫様はそう付け加えた。


相変わらず、その顔は美しい微笑みに包まれてる。


それは今いる、この真っ暗な空間の中には、全然似合わない。

それなのに、しっかりと溶け込んで、すごく不思議だった。


「ない……と言えば嘘になるやもしれぬ」


わしは、ためらいがちに言った。


「ではやはり、何かあるのですね?

話すことで、すっきりとした気分になったり、自分だけでは解決できなかったことに対して名案が浮かんだりすることもあります。

……あたくしに、話してくださいますか?」


紅姫様は、歌うようにさらさらと言った。


「そうじゃのう……。じゃがその前に、聞いておきたいことがあるのじゃが……」
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