春、恋。夢桜。
「何ですか?」


不思議そうな顔で、紅姫様がわしを覗き込んだ。


「役目を終えた花の精は、その後、どうなるのじゃ?」


わしは、ゆっくりと紅姫様を見上げた。

紅姫様が、少し驚いた顔をする。


でも、すぐに元の表情に戻して静かに微笑むと、ゆっくりと口を開いた。


「そうですね。それは、各々の状況や個性によります。

ですが多くの精は、役目を終えたと同時に、その生涯を終えます。実際、ここへ戻って来る子はほんのわずかなのですよ」


紅姫様は少し表情を曇らせた。


「よく、ここへ戻って来て下さいましたね。麗華。
あたくしはそれだけでも、とても嬉しいのです。ありがとう、麗華」


綺麗に微笑む紅姫様を、わしはそのまま見つめた。


役目を終えたと同時に、その生涯を終える……――――


その言葉が、頭の中をぐるぐると、何度も回る。



何故ならば、それは、つまり……―――
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