春、恋。夢桜。
「わしは、ここで死ぬ……と、いうことか?」

「そうですね……、それは、少し違う気がするのです」


わしはおそらく、不安そうな顔をしているのだと思う。

紅姫様は、そんなわしをあたたかな目で見た。


「役目を終えた花の精が辿る道は2つです。

1つは、その花が一生を終えた時に、そのまま光となって空に舞う道。もう1つは、……まぁ簡単に言えば、ここへ戻って来てから消える道です」


「じゃからそれは、わしの今の状況を言うのじゃろう?」


焦ってるのは、わしだけ。


紅姫様は、何も問題がないみたいに淡々と言葉を続ける。

そんな様子にわしの苛立ちは増していった。


「だから、あなたの場合は少し違うのです」

「じゃから、それはどういう意味なんじゃ?皆とわしで違うところなんて、どこにもなかろう?」


わしはつい、大きな声をあげてしまった。

それでも、紅姫様は気にしてないように見える。


そして、わしをなだめるみたいに話し始めた。
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