春、恋。夢桜。
七、夢

【一】

「なぁ。今日の課題だけどさ、一緒に図書館で…………って、おい!
響!お前、何勝手に帰ってんだよ!話くらい最後まで聞きやがれっ!」


潤が、いつものように隣の席でぎゃーぎゃーと喚きだす。


でも、俺はいつものように潤を無視して教室を出た。


……いや。

いつものように、ではないか。



放課後の廊下は、何故か当たり前のように騒がしい。


部活へ行く奴。

雑談を楽しむ奴。

予備校へ向かう奴。


それぞれが、それぞれの目的に従って活発に動く様子は
妙に明るくて、目障りにも思えた。



長いエスカレーターから降りて、自転車置き場へ向かう。


そう言えば、前に学校を飛び出した日は、自転車を学校に置き忘れていったよな。


自転車の方が、絶対に速かっただろうし、絶対に楽だったはずなのに……


がたん、という音と共に動き出した自転車で

俺は風を切るように走った。
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