俺のシンデレラになってくれ!
そう言うあたしに、ごめんね、なんて軽く言いながら、晴香が小さく首を傾けた。
眉間を硬くするあたしを見て、雅也は楽しそうに肩を揺らしてる。
篤はと言えば、視線を落として何か考え事をしてるみたいだった。
マイペースにもほどがある。
溜息を落とすのと同時に、準備を終えた先生がマイクの電源を入れる音がした。
がこん、と大きな音が響いてから、つーんとした機械音が耳に刺さる。
「とりあえず、続きは授業の後ってことで」
何事もなかったみたいに聞こえてきた声に振り向くと、声の主はすでに、机に伏せていた。
顔が見えないからわからないけど、きっと自分の仕事は終わった、みたいな安心しきった顔をしてるんだと思う。
もうこれは、授業に集中するしか逃げ道がない気がする。
対照的なあたし達を見て面白がる声も聞こえてくるから、もうダメだ。
どうしようもなく湧き上がってきたいら立ちの分、あたしはシャーペンを握りしめた。
2
「お邪魔しまーす」
門から玄関のドアまで何十メートルもあるような、そんな豪邸だったらどうしようかと悶々としてたのはついさっきまで。
あたしの家の隣の駅から徒歩5分くらいのところにあった篤の家は、想像よりもだいぶ落ち着いた一軒家だった。