俺のシンデレラになってくれ!
薄いピンクの外壁に、ドアを囲むレンガのアーチが映えている。
白で統一された窓やドアの附属品が、可愛らしさを一層引き立ててるような気もする。
相当駅に近い場所にあるってことと、その家が周りの何倍も可愛らしいことを除けば、あたしの頭の中でも処理できるくらいの物件だ。
とりあえず、門とドアまでの距離は5メートル以内だと思われる。
「どうぞ。誰もいないと思うけど」
「え……」
それは誰もいないことが都合のいいことだって意味なんだろうか。
それとも、誰もいないことが問題なのか。
もしくは、あたしの形だけのあいさつに対する形だけの考えなしの発言なのか。
……うん、何も考えてないんだろうな。
勝手にそう結論付けてから、用意されたスリッパに足をはめ込む。
ふわふわした厚手のスリッパは、明らかに冬用だ。
季節に合わせたものをさりげなく用意するなんて、篤がどこまでも自分とは違う空間にいる人間なんだと体感されられたみたいで落ち着かない。
お客様用のスリッパならおばあちゃんの家にだってあるけど、ウチのは春夏秋冬いつでも使えるチェック柄だし。
そもそも、畳の部屋の方が多い家にスリッパが存在してるアンバランスさをどう説明すればいいのかもわからない。
丁寧に統一された雰囲気でいっぱいのこの家には、そんな説明を考える必要もないんだと思うけど。
「とりあえず俺の部屋に、って言いたいところなんだけど、今はちょっと人が入れる状態じゃないから……。
10分くらい、廊下で待ってて!」