俺のシンデレラになってくれ!
予想外にしっかりと響いてきた篤の声に、あたしは思わず、息を止めた。


ドアの向こうでは明らかにばたばたと動き回る音が聞こえてるのに、それに声が消されることも、動きに合わせてぶれることもないなんて……。


そもそも狭い部屋をたった10分弱動き回ったくらいじゃ、息なんて切れないのか?


……いや、あたしなら無理だ。



「あ、10分過ぎたけどー?」


「へ?あ、ちょっと待って! あーでも、これは洗濯か。あーまぁいいや!」


「独り言自重してよ」


「できたっ!」



どんっと勢いよく開いたドアに、思わず肩を縮めた。



「マイペースすぎ」


「へ……?」


「何でもない。で?もう入っていいの?」


「うん。あ、これだけちょっと片付けてくるから、適当に座ってて。少しごちゃっとしてるのは見逃して!」



そう一気に言い切ると、篤は荷物を抱えて階段の方へ走って行った。


洗濯機のあるところにでも行ったのかな?


そんなことを考えながら、開いたドアの向こうに足を踏み入れる。


“適当に座って”なんて言われても、どうすればいいのかわからない。
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