俺のシンデレラになってくれ!
入って左側にベッド、右側の奥に大きな机の置かれた部屋には、床に座って使えるような小さな机もある。


青や黒でそろえられた家具が多い部屋に、少しだけほっとした。


少し迷ってから小さな机が置かれた壁際に鞄を置いて、床に座る。


自分がスカートだったことに気付いて、外したマフラーを慌てて広げて、足に乗せてみた。


……やっぱり、スカートって面倒だ。


肩を落としながら顔を上げると、壁にマフラーや帽子がかけられてるのが目に入った。



そういえば、こうやって人の部屋に入るのなんて初めてかもしれない。


仲はいいけど、お互いに家族と住んでるから晴香の家には行ったことがないし。


その他の人の家になんて、もちろん行ったことはない。



「お待たせ!とりあえず適当に飲み物持ってきたから、好きなの選んで」


「あ、うん。ありがとう」



本当に適当に持ってきたんだな……。


部屋にはあたし達2人しかいないのに、篤は両手でペットボトルを抱えて持ってきた。


全部で5本あるうちの3本がお茶ってありえないでしょ。


こんな寒い日に冷えた飲み物を持ってくるのもどうかと思ったけど、暖房が効き始めた室内ならちょうどいいかもしれない。



「それで?今日は何で家に? いきなり『来い』って言われても、状況が見えないんだけど」



コンビニでもよく見る緑色のペットボトルのお茶を手に取りながら、あたしの反対側、つまり、ベッドにもたれるように座った篤に視線を送る。



「今日は、“シンデレラ”を見てもらおうと思って」


「“シンデレラ”を見る?」



首を傾げたあたしを見て、篤はにっこりと微笑んだ。
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