俺のシンデレラになってくれ!
「でも、シンデレラって結構いい身分の家に住んでるんでしょ?
いじわるされてるから微妙な格好はしてるけど、お城に呼んでもらえるだけの家には住んでるわけだし。食べ物なくて飢え死にするとか、お金がなくて生活に困るとか、そういうことはないわけだし?」
「まぁ、それはそうか……。でも、俺の思うシンデレラは、やっぱりアクティブだよ」
画面に視線を戻して、篤が淡々とそう言った。
パソコンの中のシンデレラは、片方だけ残った靴について妖精に問いただしてるところだ。
しかも、胸倉つかんじゃってるし……。
「どういうこと?」
「“シンデレラ”って、実は何種類かあってさ。その中でも割と一般的な話のシンデレラって、ありえないくらいお人よしなんだよ。
でも、そんな究極のお人よしが、舞踏会にだけは執着する。何としても行きたいってさ」
「執着なの?『行けたらいいのに』ってぼーっとしてるだけじゃなくて?」
「舞踏会って何日かあるんだけど、シンデレラはその初日に、いつもは頼まれない雑用をわざと押し付けられるんだ」
「仕事が終わったら、舞踏会に参加してもいい……みたいな感じで?」
「そう。でも、そんな仕事がすぐに終わるわけがないだろ?
それでも諦めないで、舞踏会が終わる前に仕事を片付けようとするシンデレラを見たから、その辺にいた鳥とか魔法使いのおばあさんとかが、彼女を助けようって気になったんだ」
もしもあたしが、嫌がらせで理不尽な仕事を押し付けられたとしたら……。
当たり前だけど、あたしはその仕事を、何としてでも終わらせようとすると思う。
だってそうしないと、その“誰か”を喜ばせるだけだから。
しかもそれが“仕事”なら、それは、あたしが生きていくためにやらなきゃいけないことだから。
つまりあたしは、与えられた仕事を終わらせるためなら頑張れると思う。
当たり前に。