俺のシンデレラになってくれ!
だけど……――――
「舞踏会なんてさ、無理して行かなくても生きていけるじゃん。俺らで言うと、お洒落なパーティーに行くような感じだろ?
普通に考えて、そんなの面倒なだけだし」
舞踏会を“お洒落なパーティー”なんて言えるのは、篤だけだ。
少なくとも、あたしみたいな一般人……以下には言えない。
「しかも、シンデレラは極度のお人よしなんだ。
普段の生活に不満はあるのかもしれないけど、それもにこにこしながら淡々とこなしてくような人なんだから、大した野心もあるように思えない。自由な時間を確保することにだって、執着してる素振りはない」
篤は、視線をすっと右に向けた。
それが視界に入って、あたしも思わず視線を篤に合わせる。
「そんな人間が、『何かをやりとげたい』ってアクションを起こしたんだ。努力しようって。自分の欲求のために。
これって、十分すごいことだと思わない?」
綺麗な笑顔だな――――
純粋にそう思ってから、あたしは思わず顔をしかめた。
だって何となく、これじゃあ悔しい。
「ところで、シンデレラが舞踏会の日に押し付けられた仕事って何だったの?」
「え? あぁ……、大量の豆を、食べられるのとそうじゃないのに分けるんだよ。目、疲れそうじゃない?肩も凝りそうだし」
「それは大変ね。やりたくないわ」
「あれ? もしかして話そらした?」