俺のシンデレラになってくれ!

焦ったような声が聞こえたけど、あたしはそのままパソコンに視線を送った。


それが丁度いいタイミングだったらしい。


画面の中では、シンデレラが王子様の腕にしがみ付いてる。



この映画のシンデレラは王子様にも結構強引に飛びついていったんだろうな。


それだったら、舞踏会の時点でガッツリ捕まえとけばよかったんじゃないかって感じだけど……。



「やっぱ、アクティブ具合で言ったらこのシンデレラは最強だよなぁ……。しかも、一番ずる賢い」


「どういうこと?」


「舞踏会で貧相なドレス姿を見せたら、他の人達に自分の身分を疑われるだろ?だから、舞踏会はしっかり12時で切り上げる。
その場で王子にアタックすることもできたけど、そうするよりも、“ガラスの靴の持ち主探し”をしてもらった方が、自分に対する王子の執着心が確実に大きくなる。
だから、“偶然”ガラスの靴を落としてきたのはシンデレラの計算だ」


「苦労して手に入れたものの方が大切にしたくなるってことね。しかも、持ち主探しのおかげで王子様とシンデレラの仲が公になりすぎちゃってるから、王子様を横取りしようって人も出てこなさそう」


「仮に出てきたとしても、自分は悲劇のヒロインになれるからな。確実に」



なるほどね。


たかが“童話”だなんて、子どもの観る夢物語だなんて思ってた自分の認識が、少し甘かったのかもしれない。



「シンデレラ、恐るべし」


「いや、これはちょっと、極端すぎるから」
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