苦く甘い恋をする。
ほんの少し血の滲んだ唇を、親指でクイッと拭う。


眉間にシワを寄せたから……あぁ、怒り出す?


そう思った瞬間、長谷川くんは大爆笑した。


「ヤッベ。こんなの、マンガとかドラマとか?
そんな作り物の世界でしか見たことねぇし?
つーか、俺、今まで女にされたことねーし」


「…………」


「やっぱさ、おまえ。面白いわ!!」


私の両肩をバンバン叩き、長谷川くんは目尻に浮かんだ涙を、曲げたひとさし指でクイッと拭いた。
< 190 / 388 >

この作品をシェア

pagetop