男友達

 最終の電車まであと少し。駅はすぐそこだ。

 ぐるぐるとまわる頭で帰る段取りを考えてると、清水は人通りの少なくなった

路地で、いきなりキスをしてきた。

 びっくりして引き離そうとすると、ぐっと抱き寄せられ、離れられない。


 久しく活用してなかった自分の中の「女」が、パチッと音をたててスイッチを

入れた。



 目を開けると、隣には清水が寝ている。ここは…どこだろう。

 きょろきょろとあたりを見回すけど、見覚えのない部屋。ホテルではない。

 清水の部屋だろうか。



 起き上がり、簡単に服を着ると、水を欲してキッチンへ。

 
 「あれ?コップ…」


 コップらしきものが見当たらない。綺麗に片付けられていて、そこにあるか分

からない。


 「そこの上の棚です。」


 背後で声がする。


 「あ、ごめん。起こした?」

 「いえ。あの、すいません。」

 「何で清水君があやまるの?」

 「だって…」

 「いいじゃない。大人なんだし。」

 「ダメです!」


 おもむろにガバッっと起き上がり、ベッドの上に正座する。

 「桐島さんはよくても、僕はどうでもよくない。入社した時からあこがれてた

んです。好きなんですから、どうでもよくない。」



 少し怒ったように強い口調。



 私は下を向いて笑をこらえた。肩が揺れる。


 「な、泣かないでください。」

 
 もうだめだ。声を出して笑ってしまった。


 「え?え?」

 
 「清水君、パンツくらいはこう。」



 清水が割れに返り舌を見ると、全裸で正座してたのだ。真っ赤になって急いで

パンツをはく姿が妙に愛おしくなり、そばによって抱きしめた。


 「あ、そんなことしたら僕、また…。」


 そう言うと、清水の手が私の背中を滑っていく。 
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