男友達

 少し残業があって、清水には近くのカフェで待っていてもらうことにした。

 カフェに着くと、清水が手を振っている。ちょっと恥ずかしい。

 清水は私より3歳年下で、去年うちの会社に入ってきた営業担当だ。

 時々話す程度で、改めてこうして話す機会は初めてだ。

 
 「ごめんね、ちょっと伝票てまどちゃって。」

 「いえ、大丈夫です。そのおかげで、いい店見つけられましたし。」


 そういうと、カフェにあったグルメ雑誌を指差した。


 「そっか。じゃあ、今日は清水に任せるわ。あ、職場じゃないから、清水君

ね。」

 「はい。」


 そう言うと、満面の笑みで立ち上がり、お店へと連れて行ってくれた。


 こじゃれた洋風のレストランといったところだろうか。雰囲気のいい、素敵な

お店だ。


 飲み物と料理を頼むと、清水は改まった顔で急に

 「桐島さん、彼氏とかいるんですか?」

 と聞いてきた。


 私は、答えずに、何で?と逆に聞き返した。


 「僕、だめですかね。」


 びっくりした。

 
 こんなにストレートに言われたのは初めてだ。



 「急に言われても分からない。」


 そう微笑んでみせると、清水は緊張の糸がほぐれたのか、ピンと伸ばしていた

背筋を緩めて


 「そうですよね。ゴメンナサイ。」


 そう言うと、グラスに注がれたばかりのワインを飲みほした。 


 そのあとは他愛のない話で盛り上がり、お酒も進んだ。最初はびっくりしたけ

ど、本当に楽しい時間を過ごせた。


 デザートが出るころには二人ともすっかり酔っ払いになり、ケラケラと笑いな

がらフルーツがいっぱい乗っかったアイスクリームをほおばった。
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