【短編】message
「惨敗だよ・・・。なんだよあの自由記述って!」

「祐介のノートのおかげで、なんとか合格点はいけた気はするけどな。」

僕らは今日のテストの出来具合を話しながら、少し遅い昼食をとっていた。

ピークの時間を通り越したためか、学食の中の生徒数はまばらだ。

ざわざわとした騒音もなく、これくらいなら落ち着いて食事がとれる。

僕はカツ丼を頬張りながら、明日テストの行われる教科の資料を眺めていた。

「あぁ!おれその講義のノートなくしたんだよ~。」

祐介が情けない声を出して僕の向かい側から身を乗り出してきた。

「頼む。コピーさせてくれ。」

「いいけど、代わりに教えてほしいのがあんだよ~。」

「わかった。わかった。何でもするから!」

この期間、僕たち学生の助け合いの精神は目を見張るものがある。

祐介に苦手な教科を教えてもらう代わりに、僕のノートのコピーを渡すことで話はまとまった。

「じゃあ、これからハルんち行こうぜ。」

「頼みますよ!上村先生。」

冗談ぽくヨイショしたたつもりだったが、祐介はまんざらでもないような顔をしていた。

「上村先生に任せなさい!」

食器を返却口へおき食堂を出ると、入り口前にあるコピー機は行列が出来ていた。

「コンビニによっていこうぜ。」

「そうするかぁ。それにしても暑いなぁ。」

祐介はタオルを取り出して顔を一通り拭いた後、首に巻いた。

「近道しよう。この先の路地を通ればお前の家に近いだろ。」

「ちょ、コンビニ寄るんならまっすぐいこうぜ。」

僕は体の向きを変えようとする祐介を必死にひきとめた。
まだ、ミナには遭遇したくないからだ。

「なんだよ。おかしな奴だな。あそこに何かあるのか?」

「いや、そうじゃないけどさ。」

祐介は訝しそうに、挙動不審気味な僕を見つめている。

「そういや、あの道・・・」

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