【短編】message
その夜、試験期間中だというのに僕らは飲み明かした。

床に転がったビールの缶を掻き分けるように玄関になだれ込む。

「片付けはあとだ。」

「早くしないとテストうけられなくなるぞ!」

先に出た祐介を追い、僕は簡単な身支度を整えて教科書を鞄に詰め込んだ。

「今日の帰りはあの道に寄って行こうな。」

「了解。俺の一人芝居をじっくり見てくれ。」

馬鹿だなお前、と祐介は笑った。

祐介は昨日の僕の話を、半信半疑だ、と言っていた。

僕だって信じてもらえるとは思っていなかった。

だけど、最後まで僕の話を聞いてくれたことが本当に嬉しかった。
それに、半信てことは半分は信じてもらっているんだから心強い。

額から流れ落ちる汗すら、爽快で心地よく感じた。

テストに拘束されている半日の間、僕はずっとミナの探し物のことを考えていた。

小学生の女の子の大事なものなんて、まったく見当がつかない。

もしも、今日も何の情報も得られなかった時は、
地元では顔がきく―本人がそう言っているだけだが―
という祐介に頼るほかない。

警察の聞き込みみたいだ。昔よくやった探偵ごっこのことを思い出した。

終業のベルがいつも以上に待ち遠しかった。
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