【短編】message
「年が離れた姉妹だから、美奈が可愛くて仕方なかった。毎日、あの子が遊びに行って帰るくらいの時間には迎えにいったわ。あの日もそのはずだった・・・。

―美奈が着ていく服は、毎朝あたしが選んでいた。

「美奈、今日はこのピンクのTシャツとスカートにしよう?」

「やだ。美奈違うのがいい。」

「じゃあ、この水玉のブラウスにしようか?」

「それじゃないのがいい。」

いつもならすんなり着てくれる美奈が、その日に限って妙にぐずっていた。

「じゃあ、どれがいいの?美奈が選んで。」

「お姉ちゃんが選んでくれなきゃやだ。」

そんなやりとりが何度も繰り返された。

「それもやだ!」

「もう・・・いいかげんにしてよ!美奈なんか知らない!」

あたしは苛立っていた。それは美奈に対しての苛立ちではなかった。

高校に入学して、慣れない生活と環境にうまく馴染めずにいたから。
ワガママばかり言う美奈が、その日はうっとおしく感じた。

「お姉ちゃん・・・。」

「うるさい!もう知らないってば。」

泣き出す美奈を背にしてあたしはキッチンへ戻る。

「どうしたの、美奈。お洋服着て学校行こうね。」

見かねた母が美奈のもとにかけよって、無理やり身支度を整え始めた。

美奈が悪いのよ。

トーストにマーガリンを塗り、コーヒーを口に含む。

美奈なんか知らないんだから。


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