ブラウン管の中の彼女
とにかく僕にとって実早ちゃんの抱きつき癖は迷惑なことこの上ない。
「実早ちゃん…離れて…?」
「え―?やだ」
実早ちゃんは僕の腕にさらに強く体を押しつける。
そう…体を…。
実早ちゃんってば、わざとやってるのかな…?
だとしたら相当質が悪い…。
「ご飯、作れないでしょ。」
僕は実早ちゃんの手を振り払い、コンロに火をつけた。
グツグツと煮えていく鍋を見ながら、ソファでいじけてテレビを見ている実早ちゃんの様子を窺う。
テレビには映画の宣伝が映し出されていた。
勿論主演は実早ちゃん。
実早ちゃんはその画面に見いっていた。