春待つ花のように
「こちらこそ、貴方を苦しめてしまったようです。今までのことは忘れ、幸せになってください」

 そう言うとカインは彼女に背を向けて、店の扉に向かい歩き出した。

 ローラは不安になった。どうして彼はこんなことを言うのだろうか。

 もう会えないようなことを。今日だって、急に家に帰っていいとカインが言い出した。

 ノアルが答えを出したのだろうか。わからない。でも、カインと会えなくなるのは嫌だと心が叫んでいた。

「あの!」

 ローラはカインの背中に飛びつく。彼のシャツを掴み、扉を開けようとする手を止めさせた。

「また会えますよね?」

 ローラの言葉にカインは唇を噛み締めた。そして振り返って彼女の顔を見つめると、優しい表情で微笑んだ。

「また…会えます…よね、ね?」

 ローラは不安な面持ちで言う。カインは頷くが、顔には『もう会えない』そう書いてある。
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