春待つ花のように
スラムで生活をしていて、軽蔑をしたくなる気持ちもわかるが、彼女の心は汚れてなどいない。

「カインの一存だったんだ」

 後ろからの声にカインは振り返る。そこにはすっきりした顔のノアルが立っていた。

「馬鹿と思わない? 自分から火種をばら撒いてるのよ」

 アンジェラがノアルに向かって言う。ノアルは首を横に振ると、カインを見た。

「ローラのことありがとう。感謝しているよ。俺らと一緒にいたら、彼女の命も危険になる…そう判断したんだね」

 ノアルの発言に、アンジェラとミゲルは不思議な顔をする。

 一体、彼らは何を理解し合っているのか。自分たちにも、わかるように会話をして欲しかった。

「この薬屋の二階も長居していられないかも…」

 ノアルはふくみ笑いでカインを見る。カインは下を向くと、手のひらに残っている血を見つめた。
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