春待つ花のように
「実は…」

 ノアルが口を開けようとしたとき、彼女の部屋のドアが勢いよくひらいた。

 部屋の中に入ってくる人物を見て、ノアルの体が硬直した。

「レイ・クライシス…」

 しかも体中、血だらけだ。手には何か、持っている。ノアルが目を凝らしてみると、レイの手にはアスラン家の家紋の入った布が握り締められていた。

 ノアルは大きく瞳を開けると、抱きしめているマリナの体をゆっくりと離した。

「…庭師? …なんでこんな所にいるんだ!」

 レイは大声で怒鳴る。マリナとノアルの表情を見て、2人の関係を察知したのだった。

ローズと公務をしていたところに、黒ずくめの集団に襲われて、命からがら逃げ出してきたというのに…自分の女が昼間からこんなことをしているとは。

 レイの頭には一気に血が上った。ノアルを睨みつけると、マリナに近づいて、彼女の腕を引っ張った。

彼女をノアルから遠ざけると、腰につけている剣を抜く。
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