春待つ花のように
 黒尽くめの男はノアルと目が合う。しばらくノアルのことを見ると、男は部屋を出て行ったレイを追いかけていった。

 カイン…。

 どんなに殺気立っていても目を見ればわかる。あれはカインだった。

ローズを殺して、レイも追いかけてきたのだろうか。

「ノアル様、早く!」

 部屋に入ってきたゼクスが声をかける。ノアルは頷くと、レイに振り払われたときに床に尻餅をついたまま動けずにいたマリナのことを見た。

「マリナも」

 彼女に近づき、手を差し出すノアル。マリナは一瞬、嬉しそうな顔をして手を出そうとするが、すぐに下を向いて首を振った。

「マリナ?」

「一緒に行けない」

 マリナはそう言うと下唇をかんだ。

このまま、彼と一緒に行けるなら行ってしまいたい。でもそんなことをしたら、国にいる両親がどんな仕打ちを受けることになるのか。

そう考えたら、レイの傍から離れるわけにはいかなかった。
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