春待つ花のように
 レイに自分たちの関係が知られ、彼女が大変な思いをしていなければいい。自分がどうなってもそれは、自分が選んだ道だから構わない。

 でも彼女がそのせいで、レイから暴力や冷たい仕打ちを受けてしまうのは嫌だ。そしてスラムの仲間たちにも迷惑がかからないようにしたい。

「運動不足のようですね」

 後ろからカインが声をかけてくる。同じ距離、彼も走ってきたのだろうが、彼は息一つ乱れてなかった。

「カイン…」

 別荘に居た時は黒尽くめだったカイン。

 今は白色のシャツに紺のズボンをはいている。黒色の服は鞄の中にしまってあるのだろうか。カインの左手には黒の手提げ鞄を持っていた。

「レイは?」

「生きていますよ。今日のはほんの挨拶ですから」

 カインは笑顔でさらりと言う。本当に挨拶だけだったのだろうか。

 少し疑問に思うノアル。もしかして自分とマリナのことを知っていて、レイを追いかけてきたのではないだろうか。

 もしかしたら別荘に逃げ込むかもしれない。もしそうなった場合、マリナと一緒にいる自分がレイに見つかることになってしまう。

 そこまで見越して、カインはレイを追いかけてきたのではないのか。
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