春待つ花のように
 イブが無事だと聞くと、ローラは大きなため息をついた。彼女に何かあったらどうしよう、と不安だった。

 あんなにたくさんのビンが落ちてきて、どうなるかと思った。

「ノアルの服でしたよね。とりあえず鞄に入るだけ入れてみました。これで2、3日は持つと思います」

 革の手提げ鞄をカインに渡すローラ。まだ手が震えている。さっきの恐怖から、まだ立ち直れてなかった。

「すみません。もう少し、私が早く来ていれば、怖い思いをさせなかったのに…」

 カインが軽く頭をさげる。

「あ…いえ。カインさんのせいではないですから」

 ローラはぎこちない笑顔で答える。

 あそこでカインが助けてくれたことは嬉しい。あのままだったら、役人の男たちに何をされたかわからない。すごく感謝している。

 ただあのとき感じた恐怖心が今も続いている。どうすれば、震えがとまるのかわからない。

 頭では、『もう大丈夫だ』とわかっている。でも体がそれを理解してくれないのだ。

「本当にすみません。震えている貴方を見ていられなくて…」

 カインはローラを抱きしめると、そう言った。彼の温もりが伝わってくる。

 優しい人。震えも自然と消えていく。ローラはカインの胸に頭を預けた。
< 125 / 266 >

この作品をシェア

pagetop