春待つ花のように
「もう会えないと思っていたから、カインさんに会えてとても嬉しい」

 ローラの言葉にカインの顔は真っ赤になった。

「あ…えっと、ノアル様が役人に追われている身なので、外を歩けない分、私がかわりに動かないと…ですから…」

 彼が慌てて話しているのが面白い。

 いつも冷静で何が起きても落ち着いているイメージがあった分、こんな風に落ち着きのない彼は面白かった。

「ノアルはどうして役人に追われているの?」

 ローラの一言で、カインはいつもの彼に戻る。一瞬、無表情になると遠い目になった。

「貴方に話さなければいけないことなのでしょうが…とても言いにくい話でもあります」

 ローラはカインから離れると、ニッコリと微笑んだ。

「ノアルの本当に好きな人のこと?」

「え?」

「私、前に言われたことがあるの。私は、彼の中では家族。男女の関係にはなれないって。だから、彼が私を抱いたとき、誰かの身代わりにしているなって感じてた。それでも、あの時はノアルのことを好きだと思ってたから…。ノアルは、どんな人と恋をしていたの?」

 笑顔で話す彼女があまりにも切なく感じるカインだった。
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