春待つ花のように
「私はそろそろ行きますね」

「またあんな役人がくるかもしれない…だから、時間があるときは来てね」

 ローラはそっと彼の手を握る。カインは顔を背けると、眉間に皺を寄せた。

 これ以上、彼女を苦しめたくないし、危険な思いもさせたくない。一緒にいることで苦しめてしまうかもしれない。

 でも一緒にいれば、守れるかもしれない。カインの心は揺れた。

「怖い思いをしたくないの」

「わかりました」

 『負けた』とカインは思う。そんな風に言われたら、来ないわけにはいかない。

 あの彼女の震えようを思い出したら、心配で来てしまうではないか。少しの間だけ、彼女の近くにいようと思う彼だった。













「ねえ、カイン…」

 シェリルは、毛布を一枚体にかけて横になっているカインにくっつくと声をかける。

 彼女に背を向けているカインからは、何の返答もなかった。
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