春待つ花のように
『仕事を増やしたんじゃないの?』

『役人の動きを探りに行ったんじゃない?』

 などと、軽く聞き流されてしまう。

 絶対、違う。カインはそんなことをしていない。

 スラムにいるローラという女に会いに行っているのだ。そしてノアルに内緒で密会をしているに違いない。

 アンジェラたちの話によれば、ローラという女は、ノアルと深い関係だと聞いた。

 スラムで生活をしている女は何を考えているのだろうか。ノアルがどんな人かを知っているか。

 そしてカインがどんな生活をしていた人かを理解しているというのだろうか。

 彼らともに、スラムで不衛生な生活をしているように女と釣り合うような人ではない。

 もしかしてわかっているから、二人と関係をもっているのだろうか。

 ノアルは元王子で、もしかしたら次の国王になるかもしれない男。カインは、ノアルの腹心の部下。

 多分、ノアルが一番、信頼している人間だろう。剣術に優れていて、知識も豊富。

 その場の順応性、柔軟性に秀でており、忠誠心もある。

 ノアルが駄目なら、カイン…。そんな風に考えて、二人と同時進行で体の関係をもっているのかもしれない。

 ノアルが今、スラムで生活できないでいることをいいことに、カインにまで手を出して…。どういう神経をしている女なのだろうか。
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