春待つ花のように
「私の男なわけないじゃない…体の関係だけで、付き合ってるわけじゃないし」

 小さい声で言うシェリル。そんな彼女にノアルは優しく微笑んだ。

「ほら。カインが誰を好きになろうと、ローラが誰と恋愛しようとそれは彼ら個人の問題。俺らには関係のないことだろ?」

「関係のないこと? 何、余裕ぶってるのよ。そんなに彼女のことを信用してるってわけ? カインと関係をもってても、それでも『彼ら個人の問題』とかクールに言えるわけ?」

「言えるよ。それは彼女を信用しているとかの問題じゃない。自分の心もそうだけど、人の心は誰に向いていて、どんな感情を抱くかはその人自身にしかわからないこと。その思いを無理やり、変化させるなんて出来ないことなんだ」

 シェリルは怖い顔でノアルを睨むと、悔しそうに壁を叩く。

 彼が言っていることは正しい。教科書通りの答え。

 でもそうわかっていても、理解していても、相手に対して不安になったり、疑いの心をもったりするのだ。

 シェリルは、妙に割り切っているノアルに苛立ちを感じた。
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