春待つ花のように
 ローラは、カウンターやテーブルに置きっぱなしになっている皿やコップをキッチンに運びながら、イブの様子を伺った。

 毎日のように店に訪れるカインに、イブはいつも迷惑そうに対応していた。

 ほとんど閉店間際に来て、大して飲まずに大金だけ置いて閉店とともにすぐに帰ってしまう。

 店に来てもイブやローラとあまり会話はしない彼。イブから見れば、何を考えているかわからない怪しい男にしか見えなかった。

 カウンターの端の席に座り、無言で酒を飲み、気がついたときにはお金がコップの下に挟んであるだけ。

 また、ローラを連れて行ってしまうのではないか、とイブは警戒をしてしまう。

 彼が何を考えて店に来ているのか、何を思い店で酒を飲んでいるのか。ローラにたいして前科があるぶん、注意するべき人間だった。

「イブ、大丈夫だって。この人はノアルの古くからの知り合いだし、今、ノアルを匿ってくれてるのって彼なんだから」

 ローラの言葉にイブは手を止めると、彼女のことを見つめた。

 そんなこと初めて聞く。ノアルがどこで何をしているのか、ローラは知らなかったはずでないか? 

 知っているなら、どうしてそう教えてくれなかったのだろうか。
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