春待つ花のように
 ノアルと自分との密会を見てから、レイは毎日別荘に来るようになった。

 以前、黒尽くめの男に命を狙われてから彼らにたいする恐怖心もあるようで、護衛や使用人の数も増やしていた。

 このマリナのいる別荘も、倍以上の使用人が増え、彼女の気の休まる時間さえなくなってきた。

 ゼクスも前は一言二言、マリナと会話する時間があったが、使用人や護衛の配置などのやり繰りで忙しいようだ。

 ノアルは今頃、何をしているのだろうか。役人に追われている生活をしているのだろうか。

 スラムの仲間たちと仲良く生活できているのだろうか。

 もうこの国から出て、一人旅にでもでているのだろうか。それはそれでいいかもしれない。

 国を出てしまえば、役人に追われることはなくなる。新しい土地で、新しい仲間たちと生活を始めるのも悪くない。

「マリナ、そろそろ宮殿に戻らないか」

 レイの突然の言葉に、マリナは驚いた表情をした。

「宮殿…ですか?」

「母上はまだマリナとの交際を認めてはくれない。でも、この別荘で何年も暮らすより、宮殿で生活をした方がいろいろと便利じゃないか?」

 『いろいろ』その言葉に引っかかりを感じる。

 確かに宮殿に行けば、レイが別荘にくる時間が省ける。それに護衛もしっかりしている。
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