春待つ花のように
 でもローラは人を責めるような性格ではない。そのことを知っているのも自分なのだ。

「私ね、何となく気づいていたの。ノアルが私を抱く前から…きっと好きな人のかわりなんだろうなあって。何度も断ってきたノアルが急に抱くわけないから…。それでもあの時は嬉しかったの。ノアルが私を抱いてくれたこと。だから私はノアルを責めたりなんかしないよ」

 そう言うと、ローラは紅茶を一口飲んだ。いれたばかりの紅茶は熱くて、唇が痛かった。

「気づいていた?」

「うん。それに私、ノアルのこと尊敬してる。前向きに進もうと自分を律してるところは格好いいと思う。私も見習わなくちゃって思う」

 ノアルは下を向くと、少しホッとしたように顔を緩めた。

「俺は…前向きにこれているのかな。過去は振り返ってはいけないんだ。前を向いて頑張らなくてはって思って生きてきた。でも実際は前を向いているのか、わからない。結局、親の復讐をしようとしている。母が死んだ原因を探ろうと昔の仲間たちを使っている。それは果たして前向き…なのだろうか。そう考えてしまうんだ」

 彼はまた熱くなっているカップに触れる。ローラは舌で唇を濡らすと、ノアルの手首にそっと触れた。
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