春待つ花のように
レイが部屋から出るなと言っていたのだ。

 王には挨拶したから、もう平気だと。レティアや他の者には、レイから話しておくと言ってくれていたのに。

 レイは何も話していないのだろうか。それとも、部屋から出るなという約束を破ってでも、レティアには挨拶に行くべきだったのだろうか。

「黙っていても、わからないのよ」

 そう言うと、レティアは扇子でマリナのことを殴った。彼女の頬は見る見る赤く腫れてくる。

「優雅ね、本なんか読んじゃって…」

 マリナから、本を取り上げるとペラペラとページを捲っていく。

「これ…」

 レティアは怖い顔をすると、本を床にたたきつけた。そしてマリナを睨むと、何も言わずにまた頬を扇子で叩いた。

「この本、あの女のじゃないの! 汚らわしい」

「え?」

 マリナは落ちた本を見つめたまま、レティアの言葉に驚いた。

『あの女の』?

「ふん、あんたは随分とあの女に可愛がられてたからね」

 苛々しているのか、扇子の開閉を何度も繰り返している。マリナは本を恐る恐る取ると、椅子の上に置いた。
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