春待つ花のように
「ごめんなさい。こんな我が侭、言うつもりはなかったんです」

 落ち着いたローラが小さな声で言う。

「私には婚約者がいました。10年前、今の国王に殺され、その仇をとろうとしています」

 泣きはらした目で彼女はカインを見つめる。それはまるで子猫のように。

「だからその仇をとるまでは、恋はしない。出来ないものだと思っていました」

 カインの話に、ローラは傷ついた顔をする。そしてそっと彼から離れようとする。そんな彼女の手を握ると、カインはローラのことを引き寄せた。

「続きあるんです。聞いてください。」

「はい…」

「正直、今は迷っています。貴方のことが気になって仕方がない。仇のことに集中しなくてはいけないのに、考えることは貴方のことばかりなんです。こんな私でも、貴方は待っていてくれますか? 私の心の整理がつくまで…」

 カインの言葉に、ローラは小さく頷いた。それを見ると、カインは安心したように息をそっと吐いた。














「今、いいかしら?」

 閉店間際に一人の女が入ってきた。
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