春待つ花のように
「あ、はい。どうぞ」

 ローラが笑顔で客を迎えると、女は彼女のことを睨んだ。

「ローラって誰?」

 女は低い声で質問する。

「私だけど、何?」

 イブがローラよりも先に声を出す。女の雰囲気から、ローラと仲良くなりたい感じがしない。

 女の真意がわかるまで、ここは本人には近づけない方がよさそうだ。そうイブが判断した。

 女はイブの前に座ると、睨んだまま足を組んだ。

「あんたがローラ?」

「そうよ。だから何?」

 水をカウンターに置くイブ。女は水の入ったコップを脇に退けると、身を乗り出してイブの顔をマジマジと見つめた。

「へえ、あんたがローラ。カインとノアル様を寝取ったローラ…」

 独り言のように言うローラの発言に、イブの眉がピクリと動く。聞き捨てならない台詞。イブも無表情になると、喧嘩態勢に入った。

「お客さんの名前は?」

「私? 誰だっていいじゃない」

「気になるのよ。私の大切なカインとノアルを知っていそうだし…それに常連さんになってくれそうだしね」

 イブはニヤリと口元を緩ませて微笑む。
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