春待つ花のように
「あ、いえ。ちょ、ちょっと買出しに…」

 ローラは苦笑いを受けべると、慌てて店の外に出て行った。

 外に出ると、今にも店内に入ろうとしているカインがいた。彼はローラと目が合うと、嬉しそうに微笑む。

「今日は遅くなって…」

「ちょっとこっちに」

 急に腕を引っ張られるカイン。ローラの顔を見ると、今にも泣き出しそうな表情をしている。ここは彼女に従った方が良さそうだ。

 そう思うとカインは、店の裏口までついて行った。

「今日は帰ってください」

「は?」

 ローラは足を止めるなり、彼と顔を合わせずに言った。カインと向き合ってしまったら、感情がこみ上げてきて泣いてしまいそうで怖かった。

「ローラさん?」

「理由は聞かないでください。今夜は店に寄らずに帰ってください」

 目を合わせずに、彼女は頭を下げる。

「嫌です。店に寄らないにしても、理由も聞かずに帰るなんて出来ません」

 カインは頭を下げている彼女のことを抱きしめると、ローラの額にキスをした。
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