春待つ花のように
「貴女がこんな苦しい表情をしているのに、知らない振りが出来るほど心は広くありませんから」

「カインさん…」

 ローラはカインの胸に頭を預けた。

「今、シェリルさんという方が店に来ています」

「え?」

 ローラにでもわかるほど、カインが動揺した声をあげる。手を口にあてると、彼は視線を泳がした。

「イブが、私のフリをして彼女と話をしています…やっぱり、私がローラだと言って彼女と話すべきですよね」

「待ってください。私がきちんとシェリルに話をします。この前、ちゃんと話さなかった私がいけないのでしょう」

 店に戻ろうとしたローラの腕を力強く掴むとカインは静かな口調で言う。

『彼女とはどんな関係なの?』

 そう聞きたくなる気持ちを抑えると、ローラはぎこちない笑顔で頷いた。

「ローラ、店が終わっても待っててください。必ず、来ますから」

 カインはそう言うと、店の表側にまわっていった。












 店のドアを開けると、イブとシェリルが一気にカインのことを見た。

「いらっしゃい」

 イブが微笑んで言うが、目が笑っていない。
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