春待つ花のように
『ローラ』

 彼女の頭の中で、カインの声が繰り返される。いつの間にか、敬称抜きになっている。

 嬉しいけれど、少し心が痛い。

 シェリルとの関係がわかるまでは…自分が納得出来るまでは素直に喜べそうにない。

「今までのことちゃんと話さなければいけないんでしょうが、何から話したらいいのか…」

 カインはテーブルと睨めっこをしたまま、口を開く。

「話したくないことなら無理に話さなくていいです」

 ローラは下を向いたまま、早口で言う。カインは顔を上げると、彼女のことを見た。

「カインさんにはカインさんの今まで歩んできた人生があります。私にもあります。今、一緒に時間を重ねていてもお互いの過去はわからない。過去は過去です。カインさんの中でケジメがついているのなら、私が口出しすることでも無理に聞くことでもないと思います」

 彼女の言葉に、カインは再びテーブルを見る。

「それがローラの本音?」

「どうしてですか?」
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