春待つ花のように
「本音が聞きたいから。今まで私は、感情を抑えて冷静で的確な判断、指示をする人間であることに徹してきました。誰に対しても平等な態度であるよう口調にも気をつけてきた。でも、もうそれは止めた。ローラには本当の自分を見てもらいたいと思うから」

 いつもと口調が違うカイン。

 やさしく丁寧に話しかける印象とは逆のイメージ。今までの彼は、彼が作っていた性格。本当の彼とは一体どんな人なのだろうか。

「…気になります。シェリルさんって人とどんな関係なのか。あの人が店に来たときから不安で胸が苦しくて辛かった」

「婚約者がいたって話したよね? その女性を亡くしてから、毎日が辛かった。本当は一人になったことが悲しくて苦しくて…後を追って死のうとも考えてこともあった。でもそれと同時に、殺した人間を憎んだ。復讐してやりたいと思った。この手ですぐにでも殺したいと…いろんな感情が自分の中を占領して爆発寸前だった。でもあの戦いで生き残った中でのまとめ役は自分しか居なかった。感情のままに動けない現実を目の当たりにした。そんな中で、肩に手を置いてくれたのがシェリルだった」

 10年前のことを思い出していくカイン。

 あの時の心境を思い出すと、知らず知らずと拳に力が入ってしまう。
< 177 / 266 >

この作品をシェア

pagetop