春待つ花のように
 床に落ちている洋服を拾い、ズボンを履き始めるゼクス。

 情報が聞けないのなら、こんな関係に意味は無い。

 もう少し、様子を見るつもりでいるが、レティアが自分に心を許すまでは話を聞きだすことは出来ないのかもしれない。

「レティア王妃、言われていた物を買ってきました。ただ、メモにあったお茶の葉だけはちょっと見つからなくて…」

 大きな紙袋を両手に抱えて、女が一人部屋に入ってきた。

「…」

「…」

 ゼクスと女、目が合うと2人の時間が停止した。彼は上着を着る手を止め、女は持っている紙袋を下に落とした。

「あ…えっと」

 女は落とした物の音に我に返ると、急いで拾い始める。傷でもついたら、レティアに怒られてしまう。

 ゼクスもそれに気づくと、自分の方に転がってきた物を拾う。

「あ、ありがとう…ございます」

 女はゼクスが拾ったものを受け取ると、軽く頭を下げた。

「エマ」

 自分から離れようとした女の手首を掴むと、ゼクスは低い声で彼女の名を呼ぶ。女は顔を背けると、彼の手を振り切ろうとする。
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