春待つ花のように
 ノアルという青年と仲良くなり、彼が時間のあるときはお茶を煎れて自分の話相手をしてくれる。

 それはとても楽しい時間。でも楽しい時間はすぐに終わってしまう。ノアルと話をするようになってから迎える初めての週末。

 レイに会いたくないと思ったのは今日が初めてになるかもしれない。今までは、仕方が無いと思っていた。でも話相手が彼しかいなかった分、我慢が出来た。

 レイ以外に話せる相手を見つけた。ゼクスもやむなく了解してくれた。

 レイには絶対話さないし、知られるようなことはしない。そう約束をして、ゼクスを納得させた。

 彼以外に安心して心を見せれる相手いる。そう思えたとき、レイの存在は重く圧し掛かった。

「マリナ、お待たせ」

 レイは笑顔でマリナの部屋に入ってきた。マリナはソファから立ち上がると、彼にぎこちなく微笑んだ。

 その笑顔を見る間もなく、レイはマリナに抱きつく。マリナは彼の肩に頭を埋めると、テーブルに置いてある本を見つめた。

『俺が好きな本だ。マリナにあげる』

 つまらそうな顔をしながらノアルが自分に差し出してきた。

 ノアルは読書が好きだと勘違いしている。話し相手もいず、ただ沢山ある時間をつぶす為に本を読んでいるだけ。

 読書をしていれば、その間だけでも現実逃避できる。本の世界に身を置いていられる。でもノアルがくれた本は好きになれそうな気がしていた。
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