春待つ花のように
 エマとの会話を思い出しているゼクス。毎日、軍隊の訓練で体のあちこちに傷を負っては、笑顔でそう話していた。

 ゼクスは宮殿の自室に戻るなり、ドアに寄りかかったまま、大きな体を小さく折り曲げて腰を下ろした。

 エマと初めて会ったのは、12年前。彼女が軍隊の新隊員として宮殿に配置になったときだった。

 広い宮殿内で自分の配置場所がわからずに、中庭を歩いているときに声をかけられた。

「すみません! 迷ってしまって、ここに行きたいのですが…」

 一枚のメモをゼクスに見せながら、彼女は恥ずかしそうに口を開いていた。

「ゼクス、案内するといい。俺はカインたちがいるから平気だ」

 ノアルの言葉に、彼女を案内したのがきっかけだった。

 それ以後、見かけるたびに笑顔をくれるようになった。

 ゼクスも宮殿内で訓練をしている彼女を見るたびに、頑張っている姿に応援していた。

 まだ15歳の幼い少女が、大人の男たちに混じって同じ訓練をしている。どんな思いで軍隊に入隊し、ここまで上がってきたのだろうか。

 並大抵の努力では無理だろう。一体、どんな子なのか。不思議と気になっていった。
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