春待つ花のように
 ゼクスは彼女が警備の仕事をしているのを見かけると、話しかけるようになった。いつも一人でいる彼女。

 寂しくはないのだろうか。友人はいるのだろうか。そんなことを考えてしまう。

 いつの間にか、休日や休憩時間が一緒になると2人で過ごすことが多くなっていった。

 彼女の笑顔を見ていると、安らいでいる自分がいるのを後で知った。こんな風に、人に甘えたのは初めてかもしれない。

 お互い両親や兄弟と離れて暮らしている身。似ている部分もあったに違いない。体の関係をもつのも時間の問題だった。

「どうして…」

 ゼクスは小さく呟くと、首を左右に振った。今更、あの時のことを後悔しても仕方がない。

 こうして彼女と会えた。彼女は生きて、彼女の人生を歩んでいるのだ。それでいいのではないか。

 でも心に何か引っかかっている。それが何かわからない。

 ゼクスは立ち上がると、ランプに火をつけて部屋を明るくした。自分も自分の人生を歩まなくてはならない。ここで一人、過去に悩んでも…。









 コンコン。

「エマです」

 ドアのノックする音がすると、彼女が名を名乗った。
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