春待つ花のように
エマはそんな彼女の背中に向かってお辞儀をすると、部屋の端に寄せておいたカートまで歩いていく。

 午前中に焼いたクッキーを下の段から取り出すと、花柄の皿の上に丁寧に並べていった。

 ベッドで横になっているゼクスはうつ伏せのまま、じっとエマの後姿を見つめていた。

 彼女は今、どんなことを考えているのだろうか。とても知りたい。

 昔の恋人が、使えている主人と抱き合っているのを同じ部屋で見ている。それはどんな気持ちなのだろうか。

 恋人だったのはもう10年も前のこと。

 刃を向けた男のことなど、何の感情も抱いてはいないのだろうか。あるのは憎しみか。

 ゼクスはため息を吐くと、体を起こした。今日も何も聞けなかった。テーラのことやロマのことが聞きたい。

 たとえレティアから見る2人の悪口でもいい。情報を得なければ、次のステップに移れない。

 カインも彼なりに情報を得ようとしているが、新米の彼では周りの警戒が強く上手く立ちまわれないと話していた。

 なら宮殿内部の情報は、ある程度王族に信頼をもてた自分が…ということになる。
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