春待つ花のように
 レティアにも近づけた。しかし未だに、何も聞けていない。

 ノアルだって、テーラの死の真相を知りたがっているに違いない。

 笑顔で「平気」と言ってはくれているが、本当ならきっと自分が動きまわって情報収集したいくらいだろう。

「エマ」

 ズボンだけ履くと、ゼクスはお茶の用意をしているエマのすぐ後ろに立つ。彼女の体がピクッと反応すると、作業している手が止まった。

「昨日の夜、話があるって…」

「熱湯をかけましょうか?」

 彼女のお腹にまわされた手に、エマは少しお湯をかける。

「あちっ」

 ゼクスは手の甲に熱い湯がかかると、彼女から手を離した。

「今日は街に買出しに行く用事があるのですが、荷物持ちをしていただけませんか?」

 エマは彼に背を向けたまま、話し出す。ゼクスは火傷した手に息を吹きかけながら、エマの後頭部を見つめた。
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