春待つ花のように
「買出し?」

「薬を買いたいんですけど…」

 エマは振り返ると、口の端を吊り上げて笑った。彼女のその表情にゼクスは目を細めて、睨んだ。

 彼女は一体何を考えているか。そして何をしようとしているのか。

 ロマ側の人間として警戒すべき人物なのだろうか。

 ゼクスのやろうとしていることを、知っていながらもレティアやロマに報告していないところを見て安心しつつあったのだが、それは自分の油断だったのだろうか。

 昔の恋人というだけで…過去に負い目があるという引け目を感じて彼女にたいして甘い評価をしていたのかもしれない。

 ゼクスは心の中で後悔をした。10年前はロマの手先だったのだ。

 バルト暗殺計画の上層部にいた彼女のことだ。ロマとも厚い信頼関係を築いていることだろう。

 それに自分と恋仲にあったのだって10年前のことだ。昔の男とロマ。秤にかけても、どちらの存在が大切かなど、考えなくてもすぐに答えが出る。

「買うものにもよるけど…」

 ゼクスは彼女から目を逸らさずに言う。
< 204 / 266 >

この作品をシェア

pagetop